和菓子の歴史
菓子の起源は遠く、日本書紀、古事記の時代にまでさかのぼります。 十一代垂仁天皇の頃、天皇の命を受け、南の国から田道間守(たじまもり)が持ち帰った橘(たちばな)の実が、 日本での菓子の始まりと伝えられています。
奈良時代に入ると遣唐使により大陸文化が盛んに輸入され、唐菓子が日本に伝来しました。 唐菓子は神社仏閣の供物に、また平安時代には貴族の宴卓をいろどるのに欠かせないものとなったのです。 このように、菓子は宮中と深い係りを持ち、日本独特の変化を見せながら発達してきました。
当時の京の都には、御所をはじめ宮家公卿の家が多く、そのような処に菓子を納めることができたのは優れた腕を持つ菓子司に限られていました。 京の菓子職人は、技を競って優美で典雅な意匠を考案し、花鳥風月に因んだ美しい銘をつけ、献上菓子の創作に情熱を傾けました。
また、禅僧栄西によって日本に茶が伝えられてのち茶の湯が確立されるころには、家元の多くが京の地を住まいとしており、京都独特の趣きを持った「京菓子」も、この茶道によって一層の磨きがかけられ、加えて良質の京の水、都に近い近江や丹波、大和や阿波の国の最高の原材料に支えられ、日本の菓子の代表としての「京菓子」の座を築き、日本人の心のふるさとと賞賛されるようになったのです。