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京菓子辞典


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ジャンル別 歴史 主菓子 干菓子 菓子器関連 好み菓子

季節別  1月  

主菓子 花びら餅(菱葩)
はなびらもち
餅菓子。
正月といえばまず餅である。鏡餅の儀式は古くから伝わるが、餅が歴史に出てくるのは、紀元前二、三世紀の弥生時代からで、中国伝来ではなく日本独特のものである。
 平安朝には正月に、宮中で「お歯固め」という重要な儀式があった。これは餅を噛むことで、歯は齢に通じて齢を固めるところから長寿を意味する。この儀式に用いるものは、蓬莱飾りの鏡餅と菱葩の包み雑煮である。年賀参内の公卿には「雉酒」と菱葩が出るのである。昔は雉の肉を入れたものを、江戸時代には焼豆腐の一片を雉に見立て、土器に入れ、熱い酒をその上から注いで、お肴の菱葩は白い丸い餅の上に赤い菱型の餅を重ね、柔らかく蒸した牛蒡二本に味噌を塗ったものを芯にして編笠に折ったもので鏡餅と菱葩が調達される。
 宮中御定式の御鏡餅には、白木大三宝に大奉書二枚重ねを四枚敷き、その上に「ほなが」「ゆづり葉」の二枚重ねを四方へ配し、その上へ鏡餅をのせる。その餅も禁裡・賢所三斗・女院二斗・仙洞御所二斗五升・宮家一斗五升というようにそれぞれ量が定められてある。
 正式のものは下が白餅、上が赤餅の重ねであって、賢所の御神供は赤・白・赤の三重である。そして鏡餅の周囲にはころ柿二十、蜜柑二十、柑子二十、橘二十、萓二合、勝栗二合を並べ、橘と柚を四隅に一個ずつ交互に置いてある。鏡餅の上には大葩(薄く延ばした円形の白餅)十二枚、大菱(菱型赤餅)十二枚をのせ、その上から大長昆布を二枚重ねに、「ほんだわら」二把を添え、三宝の左右にたらせる。昆布の上には串柿二本をのせた上に、砂金餅というきんちゃく形の白餅に、伊勢海老を紅白の水引で結びつけてのせる。
菱葩は、現在は菓子化されているが、「歯固めの式」の包み雑煮や御定式にあるように、白餅を丸く平らにして赤い小豆汁で染めた菱型の餅を薄く作り重ね、ふくさ牛蒡を二本置く。これは押鮎に見立てる(鮎は年魚と書き、年始に用いられ、押年魚は鮨鮎の尾頭を切り取ったもので、古くは元旦に供えると『土佐日記』にある)。
また雑煮の意味で味噌を使用してある。
このような形になったのは明治中期頃のことで、川端道喜が売り出したものである。
初めは搗餅であったが、最近は求肥となっている。
一般に葩餅またはお葩というのは、菱餅のないもので、菱餅の重ねられたものを菱葩というのが正語である。
葩は、『山家集』に、花くだものといって団扁にして花弁に似たるとあって、梅や桜などの花びらに見立てたようである。
初春らしい菓子で、毎年独楽盆にのせ、裏千家の初釜に用いられる。


  未開紅
みかいこう
この銘は紅梅のことである。その名のごとく、女性的な感じであって、皮は薄とき色であり、白のこなしを重ねて漉餡を四方より包み込み、中央に黄色のしべをつけている。
縁高の蓋をとると黒地にとき色が美しく冴えて見える。
 『御前菓子図式』"未開紅"の項に、
  だんご紅にて染め、薄くのばして四角に切り、上に落雁の炒粉を付る也。
  内へ羊羹包み申候、角よりよせ申候
とあって、姿・銘はにているが羊羹を包み込んでいる。宝暦の書にも材料は異なるが現代にも使える姿はあるわけである。


  千代の蔭
ちよのかげ
薯蕷皮の小判形に若松の印のすっきりとしたもので、器とバランスがよく合う。新春には若松の根引と春の行事の飾りものに用いる。
正月上の子の日に、わが国では天平宝宇二年正月初子を詠じた歌が『万葉集』二〇にあることや、「子の日の遊び」の行事があり、郊外の山野に出て命の長い小松を引き、若葉をつんで羹にして食べ、歌宴を張ったともいう。平安朝を通じて人気のある行事である。正月の菓子としては適している。


  白梅
はくばい
花の兄、春告草ともいわれ、奈良朝に渡来したころは白梅が主であって、紅梅は平安朝といわれる。白はすがすがしく清楚な新春らしいもので女性的なやわ肌のような美しさがある。
米の粉の団子皮で白餡を包み、寒晒しにまぶして仕上げてある。


  丹頂
たんちょう
白色の山芋で作る。砂糖を加えて茶巾しぼりのきんとんを作り、白餡を芯に小判形を片寄せて絞り、つまんだ上に紅をつけ、鶴の巣ごもりを連想させたものである。
裏千家十二代 又妙斎好。


  旭餅
あさひもち
餡は紅色で丸く、葛製の外皮で四方より包む。葛のうちから赤く透き通っていて美しい菓子である。紅餡は十分冴えた色に作らねばならない。薄皮餅で包むものもある。
弘化三(1846)年五月に裏千家十代 認得斎柏叟が好まれたもの。銘の関係で一月にも使われるようである。


  千代の友
ちよのとも
蒸羊羹仕上げで、上部は淡紅、下部は白色。
裏千家九代 不見斎好。
この頃から舶来のカステーラ、カルメラなどが惣菓子に使われた。田沼時代でもある。もう煉羊羹が江戸にて売られている頃でもある。


干菓子 若松煎餅
わかまつせんべい
松は老いも若きもめでたきものとして尊ばれ、松の幸先を願い長寿を祈る。
 種煎餅に若松の焼印を押し、味噌餡を挟んで新春を祝う品である。


  熨斗結
のしむすび
結びを睦みに、熨斗と掛け、紅白の有平を結び、熨斗結として新年や祝いの取り合わせに使われる。


  結柳
むすびやなぎ
正月の床の間、または点前隅の楊枝柱にある柳掛釘に青竹の花入をかけ、白玉椿などそえて枝垂柳をさす。柳は陽気を招くとして挿し、その枝を一つ結んで畳にひきずるほど長いものが喜ばれる。
 有平の青く染めたものを結柳の輪にして、白胡麻を散らし、芽出し柳を思わせる菓子。


  福寿
ふくじゅ
打物で、福・寿の二種の文字が浮き出されている祝い菓子である。松の内に家々を訪れる祝言は福寿の喜びである。


  勅題菓子
ちょくだいかし
その年の勅題に因んだ菓子が、主菓子、干菓子ともに作られる。
 また、その年の干支を織り込んだものなどが数々ある。
昔は正月の前になると菓子屋が各種の美しい正月菓子の注文を取りに家々を回っていた。
各店のアイデアで新春の菓子が作られるわけであるが、各戸においても正月の取り合わせに、蔵のお道具の取り合わせとともに、お料理、お菓子の組み合わせをしていた。


  七宝
しっぽう
宝づくしの七宝を打物にしたすっきりした菓子である。


  唐松
からまつ
若緑色の唐松を表した打物で、美しいさえた色の丸型のものである。


  切山椒
きりさんしょ
江戸時代には正月にこれを売り出した。
小堀遠州の好みともいわれるが、下町の江戸っ子に親しまれた菓子で、山椒のはいった焦茶色のしん粉。
一センチほどの拍子木形に切ってある山椒の風味のある季節菓子である。


  万代結
まんだいむすび
千代結びは蝶結び(稚児結び)であるが、万代結びの結び方はちょっと変わっている。白の有平で斜めに赤筋が入る。
裏千家十一代 玄々斎好。


  千代結
ちよむすび
蝶結び(稚児結び)にしたもので、赤と白や青と白の染め合わせた有平である。


  窓の梅
まどのうめ
(主菓子)下地窓に梅花を散らし、なんとなく早春の訪れを感じさせてくれる菓子である。
庵の松風の音を聞き、梅の香を連想するこの菓子は、薯蕷皮の四方形で、餡は漉餡で仕上げている。
また同名で、餅皮で小豆の漉し餡を包み、形を丸型に作り、上部の皮の中に大徳寺納豆を散らし込んでいるというのもあり、裏千家十二代 円能斎好みである。
(干菓子)窓前香梅花の語句を想わせる。
吉野窓に梅花を浮き出した打物である。
冬至のころから咲く冬至梅は、季節的には正月ごろ咲き初める早咲きの梅である。


  笹むすび
ささむすび
熨斗結・千代結・万代結とともに結びは縁起よく喜ばれる。
笹むすびは他のものとちがって青と白のひきたつ色ですっきりとした美しさがある。


  つなぎ七宝
つなぎしっぽう
七宝をつなぎ、その内にいろいろ宝づくしが織り込まれ、型も変わっていて、取り合わすものによって面白い打物である。


  折鶴
おりづる
可愛らしい折鶴を打物にしてある。


  亀甲鶴
きっこうづる
亀甲型の打物であるが、内にいろいろの型をかえた立鶴が浮き出されている。


  常陸帯
ときわおび
昔、正月に常陸国(茨城)鹿島の神祭で行われた、男女の縁結びの際に帯をもって婚を定める「帯締め」から名づけられた。
これは、時代好みの友白髪から好まれた有平糖で、表は白、裏は紅色で、表面に筋を入れる。
裏千家十一代 玄々斎好。


  千代のこぶし
ちよのこぶし
握り拳を振り上げて、”山の横づら春風ぞ吹く”頃の季節感を現して、蕨型の中央へ青い筋を一本入れた有平である。
裏千家十一代 玄々斎好。


  二見浦
ふたみうら
餅で作った白色の種煎餅で、白砂糖のすり蜜で半分をかすり引きにして、上はしに紅で少しぼかした上品なもの。裏面は表と同様にできていて、反対に蜜をひく。
裏千家十一代 玄々斎好。


  筑羽根
つくばね
外は黄色の煎餅種。
それに砂糖をかけ、内に求肥を入れる。
初期の茶菓子にある。


参考文献:『茶菓子の話』(淡交社)、『カラー 京都の菓子』(淡交社)。すべて鈴木宗康先生著



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